最新がんトピックス
2012年06月号のトピックス
喫煙率の減少で肺がん死亡率は予想以上に低下
喫煙率が下がることで、これまで考えられていた以上に肺がんによる死亡率が低下し、喫煙者がさらに減少していけば、より多くの肺がんによる死亡を回避できることが、米国国立がん研究所の研究で明らかになった。
本研究は、コンピュータモデルを用い、米国における喫煙率の低下が肺がん死亡率に及ぼす影響を探るため、すべての米国人の喫煙歴とそれに関連する肺がんリスクについて根本的に再検討を行ったもので、これまでの研究に比べて非常に詳細な解析であった。
この研究は3つのシナリオで推定された。1つは実際の喫煙傾向に基づくもの、2つ目は1964年に発表された公衆衛生局長官による『喫煙と健康に関する報告』を受けて、すべての喫煙者が禁煙したという想定、3つ目は禁煙政策がまったく実施されない状態で行われたという想定で行われた。
現実には、喫煙率は低下しており、1975年から2000年までに平均して79万5000人の肺がん患者がその命を救われたと推測されている。
もし、1964年に発表された長官報告の翌年中にすべての喫煙者が禁煙したとすると、同期間に250万人が、肺がんによる死亡を回避できたことになると予測された。
この結果を受けて、米国国立がん研究所のがん制御・人口学部門医師は、研究から得られた知見によると、最初の長官報告から大きな進展を遂げ、喫煙率の低下にも大きく貢献してきたことが示されている。しかし、まだ先は長く、気を緩めてはいけないと述べている。
(一般社団法人日本癌医療翻訳アソシエイツ)
化学療法の改良により急性リンパ芽球性白血病患者の生存率が改善
米国小児腫瘍グループの率いる臨床試験に参加した急性リンパ芽が球性白血病の小児および、青年患者約2万1000人のデータを解析したところ、小児白血病の5年生存率が、1990〜1994年の83.7%から2000〜2005年には90.4%に上昇していることがわかった。
この生存率の上昇は、年齢、性別、人種または民族性、あるいは急性リンパ芽球性白血病のタイプに関わらず、1歳を超える全小児で認められた。
しかしながら、死亡の相対リスクはそれぞれのタイプで異なり、一概に青年と小児ではどちらが優位とはいえなかった。
この解析結果は、3月12日付ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー誌の電子版で発表された。
生存率が改善された主な要因は、再発リスクの低下によるものと考えられている。
既存の化学療法を用いた治療法の改善により、小児の急性リンパ芽球性白血病患者の生存率が1960年以降著しく上昇したと推測される。
コロラド大学の医師は、今後の生存率が改善するかどうかは、1歳未満の乳児を含む、治療困難な小児白血病において、新薬が開発されるかどうかにかかっていると述べた。
(一般社団法人日本癌医療翻訳アソシエイツ)
難治のB細胞リンパ腫にイブルチニブが有効
シカゴで開催された2012年米国がん学会の年次総会の発表によると、2つの臨床試験で得られた予備的結果から、イブルチニブ(一般名)が進行の速い非ホジキンリンパ腫の一部に有効である可能性が示されたという。
試験では、標準治療では効果がみられなかったり、治療効果がなくなってしまったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者の一部で、イブルチニブによる治療が、腫瘍が完全または大幅に縮小したことが明らかになった。
また、この治療による副作用は軽度で、治療継続に耐えうるものであった。
効果が得られたのは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3つの遺伝子分類型の1つで、活性化B細胞様タイプ。このタイプは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の約40%を占め、生存率が最も低いとされる。
「これまでの治療で全く効果がなかったり、治療が難しかった患者に腫瘍縮小がみられたことの重要性は、どれほど強調してもし過ぎることはありません。非常に厳しい疾患の患者に対して効果がみられるというのは、実に素晴らしいことです」
と、本試験を主導した米国国立がん研究所の医師は述べている。
患者にとって大きな問題となるのは、薬剤による副作用であり、治療を継続するか止めるべきかを考慮する問題であるが、イブルチニブで最もよくみられた副作用は、軽度の悪心と疲労であることがわかり、この点においても期待されている。
今後は治療開始前にどの患者が、B細胞受容体依存性のリンパ腫であるかを検査する検査法の開発も行われるべきと述べている。
(一般社団法人日本癌医療翻訳アソシエイツ)
再発漿液性卵巣がんにオラパリブが有効
3月27日付、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌電子版によると、分子標的薬オラパリブを用いた長期治療によって、高悪性度の漿液性卵巣がんの女性の無増悪生存期間が有意に延長されたことがわかった。
この臨床試験では、高悪性度の漿液性卵巣がんで、過去にプラチナ製剤をベースとする化学療法が効果を示したものの、その後、再発した女性患者265人が参加した。
この患者らは、パープと呼ばれる、DNA修復タンパク質阻害剤であるオラパリブ投与群とプラセボ(疑薬)投与群のいずれかに無作為に割り付けられた。
無増悪生存期間中央値は、オラパリブ群で8.4カ月であったのに対し、プラセボ群では4.8カ月であった。
BRCA遺伝子変異の有無、年齢、家族歴、過去の無増悪生存期間などの要因を考慮してみると、オラパリブ群の患者のほうが疾患進行のリスクが低かった。オラパリブ群では副作用が比較的多くみられたが、その大半は軽度または中等度のものであり、副作用により治療を中止した患者はほとんどいなかった。
だが、その一方で、全生存率については上昇せず、中間解析では、全生存率はオラパリブ群で29.7カ月、プラセボ群で29.9カ月であり、実質的に同じであった。
卵巣がんは通常、プラチナ製剤をベースとした多剤を併用した化学療法が行われ、再発時には別のプラチナ製剤をベースとした化学療法が選択されることが多い。しかし、再発治療でプラチナ製剤ベースの化学療法が効果を示したとしても、短期間しか持続しないという現状がある。
そうしたなか、この試験は、維持療法が卵巣がんの病勢コントロールに有用かどうかを調査したいくつかの試験の1つであり、今回の試験結果から、研究者たちは「オラパリブを用いた維持療法により、プラチナ製剤感受性かつ高悪性度の漿液性卵巣がんを再発した患者の無増悪生存期間は有意に延長する」と述べている。
さらに、一部の患者では長期にわたって病勢がコントロールされることを示唆しているという。
米国国立がん研究所がん研究センターの医師は、オラパリブによって無増悪生存期間が2倍になったことは期待の持てる知見であり、オラパリブをベースとしたさらなる研究の起爆剤となると、コメントしている。
(一般社団法人日本癌医療翻訳アソシエイツ)