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最新がんトピックス

2012年01月号のトピックス

一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT for Cancer)〜がん医療の向上を目ざす有志の翻訳グループ〜
Japan Association of Medical Translation for Cancer
HP:『海外癌医療情報リファレンス』
(2012年01月号)

BRCA遺伝子変異を持つ卵巣がんでは化学療法がよく効く

10月12日付けの米国JAMA誌に発表された新たな研究によると、BRCA2遺伝子に変異をもつ卵巣がん女性は、変異をもたない女性の場合と比べて標準的な化学療法がよく効き、全生存期間と無増悪生存期間が延長する可能性が高いことがわかった。

高悪性度漿液性卵巣がん女性316人から採取した腫瘍のゲノムデータと臨床データを解析した。研究に参加した女性219人は、BRCA1遺伝子変異およびBRCA2遺伝子変異が認められなかった。BRCA2遺伝子に変異が認められた女性は27人のみであり、BRCA1遺伝子の変異については35人であった。全般的にみて、BRCA2遺伝子に変異をもつ女性の5年生存率が61パーセントであったのに対し、BRCA1遺伝子およびBRCA2遺伝子に変異をもたない女性の5年生存率は25パーセント、BRCA1遺伝子に変異をもつ女性は44パーセントであった。また、BRCA2遺伝子に変異をもつ女性全員に化学療法に対する奏効()がみられた一方で、BRCA遺伝子の変異をもたない女性の奏効率は85パーセント、BRCA1遺伝子に変異をもつ場合は80パーセントであった。

患者の生存率に関して、BRCA1およびBRCA2遺伝子の変異には、変異をもたない場合とは異なる関連性があることが示された。このような違いから、論文の著者らは、BRCA遺伝子に変異を持つ場合、白金製剤を主とする化学療法がよく効く可能性があると記し、今回の研究は規模が比較的小さいため、この結果を実証するためにはより規模の大きな研究が必要としている。

奏効=治療による効果がみられること

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遺伝カウンセリング、遺伝子検査を受けるべき人

遺伝性乳がんと卵巣がんに関する遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査について、中等度リスクの女性が多く受けていて、高リスクの女性はほとんど受けていないことが研究で示された。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでは、患者および主治医に対し、家族歴をよく検討し、誰が検査を受けるべきか適切な判断をしてほしいと呼びかけている。

BRCA1またはBRCA2()遺伝子変異を有する女性では、乳がんおよび卵巣がんが発生する可能性がかなり高くなる。男性でもこれらの変異があれば乳がんリスクが増大するほか、膵がんおよび早期発症型の前立腺がんのリスクが増す可能性もある。

とはいえ、遺伝が原因のがんは全体のわずか5〜10パーセント程度なので、家族にがん患者がいたとしてもすぐに「がんの家系」とはいえない。

MDアンダーソンがんセンターでは、まず第1度近親者(両親、兄弟姉妹、子)および第2度近親者(祖父母、おじ、おば、めい、おい)に着目することを提案している。これらの近親者に1人以上乳がん患者がいる女性では、乳がんになる確率が2倍になる。また、母方または父方の一方で複数世代にわたり乳がん患者がいればリスクはさらに高くなる。

なお、1人以上の近親者が、自分と同じがん、BRCA1またはBRCA2変異陽性、50歳未満の乳がんまたは卵巣がん、乳がんおよび卵巣がんの併発、男性乳がんの、いずれか診断を受けた人はBRCA変異検査を受けるべきとしている。

そして遺伝子検査を受けようとする場合、医師に頼んで遺伝カウンセラーを紹介してもらうことが大事であるとも付け加える。遺伝カウンセラーには、遺伝子検査によるリスクとベネフィットを話し合うことができるからだ。

BRCA1,BRCA2=がん抑制遺伝子の1つ。遺伝子変異があると乳がんなどを引き起こす恐れがある

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アスピリンで大腸がんリスクが低下?

大腸がんリスクの高い人々は、高用量のアスピリン()を少なくとも2年間使用するとがんの発症が大幅に減ることが示唆された。

英国で実施されたCAPP2と呼ばれる試験において、遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)を有する男性および女性で、1日あたり600ミリグラムのアスピリンを服用した患者群と偽薬群を比べた結果、アスピリンを服用した患者群では大腸がんの発症率が約60パーセント低下することがわかった。

遺伝性非ポリポーシス大腸がんは、ある遺伝子群に変異を起こしており、大腸がんや他のがんの発症リスクを大幅に高める。遺伝子修復過程における遺伝性の変異を持ち、患者の多くが40代でがんを発症し、これは全大腸がんの約15パーセントにあたる。

ランセット誌の電子書籍版に発表された今回の発表は、2008年の試験結果を更新したもの。アスピリンを最低2年間服用した参加者(258人)では、同じ期間偽薬を服用した参加者と比較して、大腸がんの発症率が約60パーセント低下した。

さらに最低2年間のアスピリン服用は、遺伝性非ポリポーシス大腸がんに関連する神経膠芽腫をはじめ、胃、尿管、胆管、皮膚(皮脂腺)、また子宮内膜などにおける他のがん発症率を55パーセント低下することと関連していた。

しかし、アスピリンには消化管出血などの副作用がある。米国国立がん研究所のがん予防部門の医師は、他の高いがんリスクのある患者において、副作用を最小限にとどめる一方で、最大の利益をもたらすには、アスピリンをどの位の期間、どの位の量を服用すればいいのか、今後の研究が必要と述べた。

また低用量のアスピリンでもがんの予防効果があるのか、特定することが重要だと強調した。

アスピリン=一般名も同様

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HER2陽性の早期乳がんの術後療法に新併用療法

HER2()陽性乳がん患者に対して、アンスラサイクリン系薬剤()を用いない化学療法とハーセプチン()の併用療法が有効である可能性が、乳がん国際研究グループが行った大規模な臨床試験の結果からわかった。この結果は、10月6日付けの医療雑誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌で報告された。

乳がんに標準的に用いられているアンスラサイクリン系薬剤は有効な抗がん剤であるが、心臓障害や2次発がんなどの副作用が起こる恐れがある。またハーセプチンにも心臓障害の副作用の恐れがある。したがって、この2剤を組み合わせると心臓へのリスクをさらに増大させる可能性があることから、今回、アンスラサイクリン系薬剤を用いない化学療法に、ハーセプチンを併用して効果があるかどうかを調べる初の大規模な臨床試験が行われた。

3222人のHER2陽性乳がん患者に対して、術後、①アンスラサイクリン系を含む化学療法群、②アンスラサイクリン系を含む化学療法にハーセプチンを併用した群、③アンスラサイクリン系を含まない化学療法にハーセプチンを併用した群に振り分けて行い、比較検討した。

①アンスラサイクリン系を含む化学療法群(アドリアシン()+エンドキサン()+タキソテール())
②アンスラサイクリン系を含む化学療法にハーセプチンを併用した群(先の治療群にハーセプチンを併用)
③アンスラサイクリン系を含まない化学療法にハーセプチンを併用した群(タキソテール+パラプラチン()+ハーセプチン)

その結果、ハーセプチンの投与を受けた後者2群の患者の5年無病生存率は、アンスラサイクリン系の化学療法のみの群より優れていた。

また、ハーセプチンの投与を受けた後者2群を比較すると、再発はアンスラサイクリン系の薬剤を含まない化学療法のほうが多く、高度なうっ血性心不全および無症候性の心機能低下は、アンスラサイクリン系を含む化学療法と比べて少なかった。

この結果から、「HER2陽性の早期乳がんの術後療法として、アンスラサイクリン系を含まない化学療法とハーセプチンの併用療法が、もう1つの標準治療であることが立証された」と、付随論文では述べられている。

副作用のリスクと再発のリスクを考慮し、どちらの治療法がよりよいかを決める必要がある。

HER2=遺伝子タンパクで、細胞の悪性化に関わるとされる受容体。がん細胞にこれが多ければ、ハーセプチンによる治療の適応となる
アンスラサイクリン系薬剤=細胞内の遺伝物質であるDNA、RNAなどの合成を阻害することで抗腫瘍効果を発揮していると考えられている薬剤
ハーセプチン=一般名トラスツズマブ
アドリアシン=一般名ドキソルビシン
エンドキサン=一般名シクロホスファミド
タキソテール=一般名ドセタキセル
パラプラチン=一般名カルボプラチ

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