最新がんトピックス
2009年07月号のトピックス
がん翻訳ネットワーク(「海外癌医療情報リファレンス」)
(2009年07月号)
デノスマブは、ビスホスホネート製剤より有効か
骨転移のある患者では、骨吸収を抑制する抗体であるデノスマブを用いた治療のほうが、ビスホスホネート製剤による継続的な治療よりも効果が高いことが、フランスの研究者らによって報告された。
デノスマブは、骨が新しい骨に置き換わる過程で古い骨の吸収に関与するNF-ΚB(エヌエフ・カッパビー)活性化受容体に結合する分子を標的とするヒト化モノクロナール抗体。
現在、デノスマブは骨粗しょう症、ホルモン療法に伴って起こる骨量減少、リウマチ性関節炎、がんの骨転移、多発性骨髄腫を適応症として臨床試験が実施されており、閉経後女性の骨粗しょう症の予防と治療、およびホルモン療法を受けている乳がんまたは前立腺がん患者の骨量減少の予防と治療の目的で、最近米国で承認申請された。
この試験には、ビスホスホネート製剤による治療を受けたにも関わらず尿中N-テロペプチド(骨吸収をみる指標)濃度が高い前立腺がん、乳がんなどからの骨転移のある患者111人が参加し、デノスマブ投与、またはビスホスホネート製剤による治療のいずれかを受けた。結果、N-テロペプチド濃度が正常化した割合は、デノスマブで71パーセント、ビスホスホネートで29パーセントであった。
また、25週間後にN-テロペプチドの低下を維持していたのはデノスマブで64パーセント、ビスホスホネートで37パーセント。骨折など骨に関連した症状の発症はデノスマブで8パーセント、ビスホスホネートで17パーセント。これらの結果は、前立腺がんの骨転移等のある患者にとって、デノスマブがビスホスホネート製剤より有効であることを示唆している。
ビタミンDとがんに関する最新研究発表
近年ビタミンDが心臓病やがんをはじめとする疾患の予防効果を示すというエビデンス(科学的根拠)が急増している。特にこの5年ほどの間に、がんの発症率とビタミンDとの関連を検討する多くの大規模臨床試験が実施されており、注目が高まっている。
これまでの観察研究(通常に生活している人々の集団を経時的に観察すること)、ランダム化比較試験のエビデンスを統合すると、ほとんどの研究対象集団において、ビタミンD値の上昇ががん発症リスクの低下に大きな役割を果たしているとみられる。米国における半数以上の女性および40パーセント以上の男性の血中ビタミンD濃度は最適濃度を下回ることも言及されており、「国民的ビタミンD欠乏症」が懸念される。
これまで最も有力なエビデンスは、ビタミンDと大腸がんとの関連を立証したものである。数多くの優れた臨床試験において、ビタミンD値が高い人は、低い人に比べて大腸がんになるリスクが半減し、ビタミンD値が高い人々は、低〜中程度の人々と比べて、大腸がんで死亡するリスクが約75パーセント低くなることが報告された。
その他、口腔がん、食道がん、膵臓がんおよび白血病のリスクが大幅に減少することも複数の試験で示唆されている。
また、2006年に発表されたビタミンDとがん発症リスクとの関連についての研究結果では、大腸がんの他、前立腺がん、乳がん、卵巣がんのリスクも減少する可能性があると結論づけられた。さらに、ビタミンD値が高いと、特定のがんの生存期間を延長することも示唆されている。ビタミンDの供給源が、食品やサプリメント、あるいは日光(紫外線)であるかどうかにかかわらず、いずれの供給源も有用であったという。
最新のメイヨークリニックによる過去のデータと比較した研究では、ビタミンDの欠乏状態と慢性疼痛患者の麻薬製剤摂取量が相関することが報告された。この研究では、麻薬性鎮痛剤を要し、かつビタミンDが欠乏している患者は、正常なビタミンD状態の患者に比べ、高用量(およそ2倍)の鎮痛剤を摂取していることが明らかになったのだ。この研究はペイン・メディスン誌に掲載された。
評価や治療は比較的簡単で、かつ費用もかからなかった。血中のカルシジオール濃度を調べることで、ビタミンDの状態は簡単に調べることができる。その後、医師の指導のもとに適切な補充治療計画が立てられた。
カルシジオールと呼ばれるビタミンDの血中濃度は、75ナノモル/デシリットルが最適であると考えられている。高齢者や肥満者、皮膚の色の濃い人、1年を通して日光の紫外線B波(UVB)が弱い北方地域に在住している人などはとくに注意を要する。たとえば、米国サンフランシスコ以北の地域では、晩秋から早春にかけてUVB量が少なすぎてビタミンDを生成することが全くできないという。
ビタミンDの有効血中濃度を得るためには、多くの人はビタミンDを1日約1000IU(国際単位)、ビタミンD値が低い傾向にある人は、おそらく1500IU摂取する必要があるとみられる。これまで推奨されてきた米国成人のビタミンD摂取量200〜600IU/日では低すぎて、がんの予防はもちろん骨の保護効果を得ることすらできない。ビタミンDの健康効果に関するエビデンスの増加を受け、米国小児科学会では、最近、小児のビタミンD推奨摂取量をこれまでの2倍に増やし、またカナダがん協会では、秋冬期間の成人のビタミンDの一般的な推奨摂取量を1000IU/日に引き上げた。
極北地域の秋冬期間であれば、たとえ寒さを我慢し、素肌を外気にさらしたとしてもビタミンDを生成することはできない。基本的には日光が重要な補給源であり、居住地域により異なるものの、約10分直接日光に当たるだけで1日に必要なビタミンDが生成されるが、同時に日光浴によって皮膚がんのリスクが増すことを考慮しなければならない。
非常に多くの要因がビタミンD値に影響を及ぼしているため、包括的な推奨摂取量を決定することは困難でもあるが、将来的には各個人に合わせた推奨量が必要になると考えられる。ビタミンDは、一般的に食品にはあまり多く含まれていないが、サケ、サバ、イワシ、マグロなどの魚類は比較的豊富である。
米国食品医薬品局が進行腎がんの治療薬アフィニトールを承認
米国食品医薬品局は09年3月30日、他の薬剤による治療後に進行が認められた進行腎がん患者に対する治療薬として、経口の錠剤アフィニトール(一般名エベロリムス)を承認した。
腎細胞がんは、血液中の老廃物をろ過する腎尿細管粘膜から発生する最も一般的な腎がんである。このがんは放射線療法や化学療法などの標準治療に対して抵抗性を示し、第1次治療として、腎臓の外科的切除が行われることが多い。がんが腎臓に限局する場合、5年生存率は60〜70パーセントであるが、がんが体内のその他の部位に広がっている場合、生存率は著しく低下する。
「アフィニトールは、スニチニブあるいはソラフェニブによる治療によって効果が認められなかった進行腎細胞がん患者にとって新たな選択肢となる。アフィニトールによる分子標的治療によって、腫瘍進行を伴うことなく生存期間の延長が認められている」と、米国食品医薬品局医薬品評価センター主任のロバートジャスティス医師は述べている。
アフィニトールは、細胞内のシグナル伝達を阻害し腫瘍増殖を抑制するキナーゼ阻害剤に属する。本剤は、別のキナーゼ阻害剤、スーテント(一般名スニチニブ)あるいはネクサバール(一般名ソラフェニブ)による治療歴のある進行腎細胞がん患者が治療の対象となる。
スーテントおよびネクサバールがマルチキナーゼ阻害剤(多数のキナーゼを標的とする)であるのに対し、アフィニトールは、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)として知られる特定のタンパク質を阻害し、がん細胞の増殖、分裂および代謝を抑制するものだ。
アフィニトールの安全性および有効性を検討する臨床試験は、本剤投与群で、非投与群よりも腫瘍の増殖や進展が遅延することが中間解析から明らかになったため、途中で中止された。また、病勢進行の遅延期間は、アフィニトール投与群の半数で約5カ月間、非投与群では2カ月間であった。
この試験で最もよく見られた副作用(少なくとも20パーセントの患者に発現する副作用)は、口内炎、疲労、下痢、食欲不振、四肢の水分貯留、息切れ、咳嗽、悪心、嘔吐、発疹、および発熱。血液サンプルの臨床検査では、少なくとも半数の患者で、貧血、白血球減少、高コレステロール、高中性脂肪および高血糖が認められた。
新しい個別血液検査で、がん治療の成果をモニター
ほとんどすべてのがんは、細胞の成長を制御する遺伝子の変異によって起こる。がんが増殖する際、この変異した遺伝子の生物学的証拠であるDNAの断片が血液中に放出される。米国ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らは、血液中の腫瘍由来のDNAを計測する新しい試験方法を開発した。
各々のがん細胞のゲノム内に含まれる固有の遺伝学的指紋に基づく血液検査によって、腫瘍の存在を検出するのみならず、その進行を追跡することもできる、と本研究者らは言う。この研究の成果はネイチャー・メディスン誌の2008年9月号で報告された。
「DNAがHIVなどの慢性ウィルス感染症の検出、計測や治療に利用されてきたのと同様に、循環性腫瘍DNAを測定することでがん治療の効果を向上することができる」と、この研究を主導した腫瘍学准教授ルイスディアス医師は述べる。
すべてのがんには、正常な細胞には存在しない変異した1組の遺伝子がある。ディアス医師らは18人の大腸がん患者の腫瘍組織から各患者のがん細胞内に存在する変異を特定した。さらにこの情報と特殊な手法を用いて、この患者らの血漿中に対応する変異腫瘍DNAを探策した。
その結果、18例すべてにおいて、組織内に見出された各変異は血漿中でも検出されたのだ。この試験では、変異遺伝子を検出しただけではなく、循環性腫瘍DNA値も計測し、患者の腫瘍量の分子的証拠を得た。循環性腫瘍DNA値が高いほど、腫瘍量がより多いと解釈できる。
「この新しいアプローチを用いることで、単純な検出のみならず、実際に病気を起こしている変異を使って腫瘍量をリアルタイムにモニターできるようになった」と同研究論文の筆頭著者であるフランクディール博士は言う。
「もっとも興味深い発見の1つは、循環性腫瘍DNAが、X線やCTスキャンでは判別できない微小残存病変を計測できる感度がありそうなことである」と共著者で外科医のミッチェルコーチ氏は述べている。
この研究に参加した患者は治癒切除手術を受け、最長2年にわたって経過観察された。最終的に疾患が再発したすべての患者で手術後に循環性腫瘍DNAが検出された。手術翌日にすぐ検出されることも多く、X線またはCTスキャンで視認できる何カ月も前に検出されていたという。手術後、変異DNA値が検出限界値以下に低下した患者の場合、再発は見られなかった。
この試験方法は研究途上であり、まだ臨床で利用できるわけではないが、「1つの臨床応用として治癒手術後の残存病変の検出に使えるのではないか」とディアス医師は言う。
「すべての患者が強力な術後補助化学療法を必要としているわけではないことはわかっているが、本研究によりどのような人に対して強力な化学療法が必要かを見定められる可能性がある」とのことである。
この研究は大腸がんについて行われたが、ディアス医師によると、この試験は既知の遺伝子変異と関係付けられているすべてのがんに適用可能とのことである。
米国食品医薬品局が、悪性度の高い脳腫瘍にアバスチンを承認
米国食品医薬品局は、標準治療後に進行した多形性膠芽腫患者の治療にアバスチン(一般名ベバシズマブ)を承認した。
多形性膠芽腫患者は脳組織を侵し、身体機能や精神機能に影響を及ぼす進行の速いがんであり、米国では毎年約6700人が発症している。
外科手術や放射線治療、化学療法といった初期治療後に、ほぼ全例で再発する。
「この種のがんは治療に対する抵抗性がきわめて高いため、治療は困難である」と米国食品医薬品局の医薬品評価研究センター抗腫瘍薬製品室長であるリチャードパズダー医師は述べている。
「アバスチンはその他の治療薬が奏効しない進行性多形成膠芽腫患者にとって、新たな治療法を提供するもの」と同氏は述べる。
アバスチンはモノクローナル抗体で、体内免疫系によって産生される抗体を模倣して有害物質から身体を防御する。この薬剤は、新生血管の形成を促進する血管内皮増殖因子の働きを阻害するという働きをする。これらの新生血管は腫瘍に栄養を供給することで腫瘍の増殖を促すうえ、がん細胞が体内循環する経路も作ってしまうのだ。
本剤は転移性大腸がんの治療薬として04年に初めて承認され、その後、扁平上皮以外の非小細胞肺がんおよび転移性乳がんにも適応拡大された。
2件の臨床試験では、多形性膠芽腫患者の約25パーセントが概ね4カ月間アバスチンに奏効した。アバスチンに関連した重篤な副作用としては、消化管穿孔や創傷治癒に伴う合併症、出血・血栓で、死亡例も複数報告されている。その他の重篤な副作用は重い高血圧、神経・視覚障害、白血球減少、感染症、脳卒中、心筋梗塞および腎障害であった。また最も多くみられた有害事象は鼻出血、頭痛、高血圧、鼻水、タンパク尿、味覚異常、皮膚乾燥、肛門出血、流涙および皮膚剥脱であった。
進行した乳がん患者ではハーセプチンの継続投与が有益
ハーセプチン投薬中にがんが進行した転移性乳がん患者に対して、ハーセプチンの継続投与が有益であるとヨーロッパの研究者が発表した。この試験の詳細はジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー誌09年4月20日号で発表された。
HER2タンパクを過剰発現しているHER2陽性乳がん患者の治療にハーセプチンは重要な薬剤となっている。しかし、多くのHER2陽性転移性乳がん患者で、ハーセプチン投薬中もしくは投薬後にがんの進行がみられるが、このような患者に対するハーセプチンの継続の有益性については未解明であった。この疑問を解明するために、ハーセプチン投薬中にがんが進行した転移性乳がん患者を対象として、各78人をゼローダ+ハーセプチンとゼローダ単独に無作為に割りつけた多施設試験が実施された。追跡調査の平均期間は16カ月。
その結果、ハーセプチン併用群と、ゼローダ単独群では、奏効率が48.1パーセント対27パーセント、死亡数が33対38、進行までの中央値が8.2カ月対5.6カ月および生存期間中央値が25.5カ月対20.4カ月と、ハーセプチン併用群でより優れた結果が得られた。一方、毒性は両群において同程度であり、ハーセプチンによる治療中に乳がんが進行した場合でも、継続して投与することの有用性が示された。