各種がん
小児がん
小児がんの治療 Q&A
- 急性リンパ性白血病で、骨髄移植か臍帯血移植を考えている (2009年03月号)
- 中2の娘に白血病であることを伝えるべきか (2009年03月号)
- 神経芽腫の家族がいると、発症リスクが高いか (2009年03月号)
- 急性リンパ性白血病で移植を受ける予定。副作用が心配 (2008年09月号)
- 娘の首のしこりが気になる。悪性リンパ腫では? (2008年09月号)
- ウィルムス腫瘍の化学療法。術前と術後のどちらがよいか (2008年09月号)
- 急性リンパ性白血病が再発。治療法は? (2008年01月号)
- 骨肉腫で切断した脚が痛い。痛みを取り去る方法は? (2008年01月号)
- 頭蓋咽頭腫で受ける放射線療法の副作用が心配 (2008年01月号)
回答者・牧本 敦さん国立がんセンター中央病院
小児科医長
Q:急性リンパ性白血病で、骨髄移植か臍帯血移植を考えている
7歳の1人息子のことでご相談します。急性リンパ性白血病と診断され、抗がん剤治療を受けていましたが、なかなか寛解に至りませんでした。今後、抗がん剤を代えて、第1寛解期に入った時点で移植を行うと言われています。
1人息子のため、兄弟ドナー(提供者)はいません。骨髄バンクと臍帯血バンクに登録して、適応するドナーを探していますが、生着不全などの心配もあります。いずれかのドナーが見つかった場合、移植を受けてよいものか、今も悩んでいます。アドバイスをお願いします。
(茨城県:36歳男性)
A:骨髄移植を第1に考えたほうがよい
小児急性リンパ性白血病の第1寛解期で移植を行ってよいとされているのは、一般的には、長期の生存割合(治癒率ともいえます)が40パーセントを切る病態です。お子さんは「なかなか寛解に至らない」ということですから、再発の危険性はかなり高く、移植を受けられるのは、妥当な選択だと思います。移植を受けると、再発率は低くなります。
骨髄バンクと臍帯血バンクでは、一般的には、ドナーは臍帯血バンクのほうが見つかりやすいです。骨髄移植では、6抗原あるHLA(ヒト白血球型抗原)が患者とドナーとで完全に一致しないと移植できませんが、臍帯血移植では、6抗原のうち4抗原が一致していれば移植できるためです。
また、臍帯血は赤ん坊のへその緒から取る胎盤の血液で、すでに採取して、保存してあるものを使用します。そのため臍帯血移植では、ドナーさんの提供意思やスケジュールに左右されません。
ただし、臍帯血移植には、デメリットもあります。まず生着不全が起こる割合が骨髄移植に比べて高い点です。
生着とは、移植された細胞が新しい場所で、身体の一部として生きて、機能することです。骨髄移植などの造血幹細胞移植の場合でいえば、ドナーから移植した造血幹細胞が患者の骨髄の中に入り込み、新たな血球を作り始めることです。造血幹細胞移植で白血病を治すためには、生着が大前提です。
生着不全は移植された細胞が拒絶されて、このプロセスがうまくいかないことで、これは治療としては失敗を意味し、命に関わる事態にもなりかねません。
生着は起こるけれど、生着が遅いために感染合併症が多くなることも臍帯血移植のデメリットです。個人差はありますが、生着は通常、骨髄移植より臍帯血移植のほうが遅くなります。
また、7歳というと、ある程度、体が大きくなっていると思います。体が大きいと、その分、必要な細胞数が多くなりますが、臍帯血の量はすでに決まっているため、増量することはできません。その点、骨髄移植では、患者さんの体重に見合う骨髄の量を採取して移植できます。
また、成人の白血病では、臍帯血移植より骨髄移植のほうが治療成績や安全性が高いといったデータは多々あります。
以上のような現状を考えると、骨髄移植のほうがより標準的な移植法であるといえます。
臍帯血移植を受けたほうがよいケースは、小さな子供で、かつ再発する危険性が迫っていて、骨髄移植のドナーを待つ時間的な余裕のない場合です。この方の場合は、第1寛解期に入る時期の移植を考えているのですから、急を要するような状態ではないでしょう。
以上のことなどから、骨髄移植を第1に考えてドナーを探すことをおすすめします。ただし、骨髄移植はドナーが見つかっても、最終的な同意を得られないこともあることなどから、臍帯血移植を第2候補として考え、臍帯血移植のドナー検索も継続するのがよいと思います。
(2009年03月号 がん相談/小児がん 回答者:牧本 敦さん 国立がんセンター中央病院小児科医長)
Q:中2の娘に白血病であることを伝えるべきか
中学2年の娘(14歳)が急性リンパ性白血病と診断されました。入院して抗がん剤治療を行う必要があると主治医に言われましたが、娘には「体調が悪い状態が続いているから、入院してきちんと検査をしてもらう」とだけ話しました。しかし主治医には、これから抗がん剤治療が始まるのだから、病気のことをきちんと伝えたほうがいいと言われています。娘に病名などを伝えるべきでしょうか。
(長野県:44歳女性)
A:正直に話して、家族と一緒に病気に立ち向かうのが望ましい
医療施設や医師によっては、告知をしないこともありますが、私自身はこれまで、ほとんど全員の患者さんに告知をしてきました。
理由は幾つかあります。まず「嘘はばれる」ということ。抗がん剤を使用すると、多くの場合、嘔吐や倦怠感、脱毛、発熱、口内炎などの副作用が起こります。こうした状況に「検査のせい」とか「貧血の一種だよ」などといった嘘が通用するはずがありません。
家族から何も知らされてないのに、知らない誰かに「あなた、白血病なんでしょ。大変ね」などと“告知”されたら、本人はそれこそ大きなショックを受けてしまいます。また今は、情報が氾濫している時代です。中学生ならインターネットなどで調べて、自分の状態を知ることもある程度は可能です。親や兄弟といった、近しい人に嘘をつかれたり隠し事をされたりすることのほうが精神的ダメージはよほど大きく、闘病の勇気や意欲も萎えてしまいます。
告知の有無にかかわらず、大切なのは、お子さんを1人にしないことです。告知をしないことで、かえって1人にしてしまう可能性もあります。毎日しっかりとお話しをして、患者さんがどうなろうとも家族が必ずついていることをわかってもらうことです。家族だけで対処が難しいときには、臨床心理士やチャイルド・ライフ・スペシャリストなどの力を借りるのもよいでしょう。
10代の急性リンパ性白血病の6〜7割は治ります。病名や病状を正直に伝え、治癒をめざしてしっかりと闘病できる環境をつくって、家族みんなで努力するのが最善ではないでしょうか。
(2009年03月号 がん相談/小児がん 回答者:牧本 敦さん 国立がんセンター中央病院小児科医長)
Q:神経芽腫の家族がいると、発症リスクが高いか
現在6歳の長女は生後2カ月のとき、神経芽腫(神経芽細胞腫)と診断されました。右副腎の神経芽腫瘍で、肝臓にも転移していましたが、手術や化学療法などで治癒し、今は元気に過ごしています。
相談したいことは、現在5カ月の次女についてです。今のところは気になるような症状はないのですが、姉が神経芽腫になったことで、妹もなる可能性が高いということはあるのでしょうか。自治体では今は行われていないスクリーニング検査を受けたほうがよいでしょうか。
(宮城県:33歳女性)
A:発症リスクに関係はなく、スクリーニング検査を受ける必要はない
神経芽腫の家族がいることで発症のリスクが高まることはありません。上のお子さんが神経芽腫になったからといって、下のお子さんのリスクが高まることはないので、その点はご安心ください。
神経芽腫のマススクリーニング検査は以前は行われていましたが、2004年に中止されました。マススクリーニングを行っても、神経芽腫患者の死亡数が減少しなかったことが最大の理由です。治療の必要のない小さな腫瘍まで見つけてしまう一方で、本当は必要のない手術によって命を落とすなどの事態も起きています。このように、マススクリーニング検査の功罪の罪のほうが大きいという指摘があり、中止に至りました。
そうして考えると、下のお子さんがスクリーニング検査を受ける意味はほとんどないでしょうが、「神経芽腫になっていない」という安心感を得るという意味合いはあるかもしれません。ただし、もし神経芽腫が見つかった場合、治療方針を決めるのは難しい問題です。マススクリーニングで発見された神経芽腫に対する最適な治療方針はまだ決定していないのです。結論的には、妹さんがスクリーニング検査を受ける医学的な必要性はないと考えます。
(2009年03月号 がん相談/小児がん 回答者:牧本 敦さん 国立がんセンター中央病院小児科医長)
Q:急性リンパ性白血病で移植を受ける予定。副作用が心配
7歳の次男のことでご相談します。次男は急性リンパ性白血病と診断され、抗がん剤治療を受けていました。しかし1カ月経っても、寛解に至らないため、今後は、抗がん剤を換えて、第1寛解期に入ったタイミングで移植療法を行うと、主治医に言われています。
HLA(白血球の型)は、中学3年の長女(14歳)とは不一致ですが、大学1年の長男(18歳)とは一致しました。長男をドナー(骨髄提供者)とした移植を勧められています。調べてみると、移植によって、その後の成長が止まったり、性腺機能が失われたりすることがあるとあり、心配です。
移植によって、このような副作用はどれぐらいの割合で起こるのでしょうか。また、移植ではなく、抗がん剤などで治療することはできませんか。
(長崎県:女性42歳)
A:副作用はあるが、兄弟ドナーがいるなら受けるのがよい
標準的な寛解導入療法を行って、寛解に至らずにいるのであれば、一般的に予後はかなり思わしくありません。抗がん剤を変更して寛解に入ったとしても、移植療法を行わないと、再発率は60パーセント以上あると考えられます。
しかし、寛解に入った後、移植療法を行うことで、再発率をかなり下げることが期待できます。そのため、お子さんのようなケースでは、移植療法が勧められます。
7歳の急性リンパ性白血病のお子さんに対し移植療法を行う場合、通常、移植の前に全身への放射線照射を行います。この放射線照射によって、性腺機能を含むホルモンのバランスが崩れてしまいます。そのため、第2次性徴があまり起こらずに、将来、子供を作れなくなったりすることがあります。また、成長ホルモンや骨髄軟骨(手足の軟骨)にもダメージが加わるため、身長が伸びにくくなることもあります。これらの副作用は、個人による程度の差はありますが、ほぼ必ず起こると考えたほうが良いでしょう。
幸いお子さんには、HLAが一致する18歳のお兄さんがいます(現在は、原則として18歳以上の人でないと、ドナーにはなれません)。血縁ドナーから受ける同種骨髄移植の安全性はとても高く、重篤な合併症の危険性はかなり低い実績があります。残念ながら何らかの副作用は起こると思いますが、白血病の再発率を少なくできるメリットを考えると、第1寛解期に移植療法を受けることをおすすめします。
(2008年09月号 がん相談/小児がん 回答者:牧本 敦さん 国立がんセンター中央病院小児科医長)
Q:娘の首のしこりが気になる。悪性リンパ腫では?
風邪をひいたわけでもないのに、7歳の娘の首の回りにしこりができました。いちばん大きなしこりは2センチくらいあるように思いました。しこりに気づいて10日後くらいに、近くの小児科医に診てもらい、そのときは抗生物質を数日分、処方してもらいました。しかし、しこりはいっこうになくなりません。
しこりに気がついて、すでに1カ月以上が過ぎましたが、しこりはむしろ大きくなってきているように感じます。痛みは訴えていませんが、調べてみると、悪性リンパ腫の症状に似ているように思い、怖くなりました。
どういう病院の何科に診ていただけばよいのでしょうか。また、どのような検査を行うのでしょうか。
(島根県:女性35歳)
A:小児がんの診療経験の多い小児科の受診を
7歳くらいの年齢はリンパ組織が非常に発達する時期なので、正常なリンパ節でも1センチ以上になることがあります。とはいえ、1カ月程度で、どんどん大きくなってくるという状態は、悪性腫瘍のリンパ節転移なども視野に入れる必要があります。
かかるべき診療科は小児科です。それも、小児がんの診療経験の多い医療施設を選ぶとよいでしょう。そうした施設では、血液検査はもちろん、MRIなどの画像診断、必要であれば、リンパ節生検も行ってくれると思います。
小児悪性リンパ腫は大きくホジキンリンパ腫(ホジキン病)と非ホジキンリンパ腫に分けられます。
日本人が罹患する悪性リンパ腫は、ほとんど非ホジキンリンパ腫です。非ホジキンリンパ腫はさらに大細胞性リンパ腫、バーキット型リンパ腫、リンパ芽球リンパ腫の3つに分かれます。どのタイプの小児悪性リンパ腫であっても、早期に発見できて、適切な抗がん剤治療を行えば、8割以上の方が治癒するといわれています。
(2008年09月号 がん相談/小児がん 回答者:牧本 敦さん 国立がんセンター中央病院小児科医長)
Q:ウィルムス腫瘍の化学療法。術前と術後のどちらがよいか
3歳半の息子がウィルムス腫瘍(腎芽腫)と診断されました。左側の腎臓で、生検の結果、予後は良好のタイプと言われ、少しだけ安堵しています。
今後は、腫瘍のある左側の腎臓を切除する手術を行い、その後、抗がん剤治療をすると言われています。腎臓が1つだけになることが、親として、とても不安です。主治医は「大きな問題はない」と言いますが、今後の長い人生を考えても、大きな問題は本当にないのでしょうか。
また、最近では、先に抗がん剤治療を行ってから切除手術をすることもあると、あるウェブサイトに書いてありました。それによって、切除する範囲を小さくすることができることもあるそうです。抗がん剤治療は手術前と手術後とで、どちらが望ましいのでしょうか。
(長野県:男性31歳)
A:一長一短があり、欧米で見解が分かれる
医学的には、腎臓はどちらか一方があれば、天寿を全うできるだけの機能を保てるといわれています。ですから、ウィルムス腫瘍の根治をめざして、仮に左側の腎臓をすべて切除しても、生存に関わるような大きな問題はないと考えられます。
診断後に速やかに手術を行った後に行う術後化学療法と比較して、手術の前に抗がん剤投与(術前化学療法)を行うことがより有効であるかどうかは、議論が分かれています。大別すると、ヨーロッパでは術前化学療法を実施し、アメリカでは診断後速やかに手術をする方針をとっていて、日本では、アメリカに近い治療・研究を行っています。
病気全体で見たときには、ヨーロッパとアメリカの治療成績はほとんど変わらず、術前化学療法の有り無しでは、それぞれ一長一短があります。
術前化学療法は、手術前に数週間の化学療法を行います。それによって、腫瘍を小さくすることができ、手術で切除しやすくなります。また、腫瘍切除の際、腹腔内播種(腫瘍がおなかの中に散ってしまうこと)が起きてしまうことがあります。
しかし、先に化学療法を行い、腫瘍を小さくすることによって、腹腔内播種の危険性を下げることができます。
これらの点は、術前化学療法の長所といえますが、短所としては、手術までの期間、腫瘍が体内にとどまることになり、その分、転移する可能性が高まることが指摘されています。
一方、診断後速やかに手術を行うのは、転移の元となる腫瘍を速やかに切除し、転移の危険性を最小限にするという発想です。そして、体内の腫瘍の量を大幅に少なくしたうえで術後化学療法を行います。通常、診断時の大きさの腫瘍が問題なく切除できる場合には、この治療法が望ましいと考えられます。
術前化学療法と術後化学療法の長所と短所のほかに、腫瘍の大きさや浸潤の程度、転移の有無なども、治療法を選択する決め手になります。また、内科医や外科医の治療技術や医療施設の治療態勢、医師間の連携具合などによっても選択すべき治療法は異なるでしょう。
良好タイプのウィルムス腫瘍は、適切な治療を行えば、ほとんどの患者さんが治ります。治療法の選択は、ケースバイケースの部分が多々ありますから、前記のことをお知りになったうえで、改めて主治医によくご相談ください。
(2008年09月号 がん相談/小児がん 回答者:牧本 敦さん 国立がんセンター中央病院小児科医長)
Q:急性リンパ性白血病が再発。治療法は?
8歳の息子のことでご相談します。息子は4歳になってまもなく、急性リンパ性白血病になり、1年半、化学療法を受けました。治療は終わり、寛解に至ったのですが、半月前に再発が判明しました。今後は再び化学療法を受ける予定ですが、骨髄移植を受けなくても大丈夫なのでしょうか。
(茨城県:35歳女性)
A:骨髄移植は副作用が強い。化学療法で対応可能なら化学療法を
小児白血病は、再発した時期によって、治りやすさ(逆にいえば、治りにくさ)が違います。一般的には、治療を終えて再発するまでの期間が長いほうが治る可能性が高くなります。
この方は、5歳半のときに治療を終えたようですから、治療を終えてから約2年半後に再発しています。とすると、がんは比較的ゆっくり進んでいると思います。その場合、必ずしも骨髄移植を行う必要はないと考えます。
小児白血病に使用される抗がん剤はプレドニン(一般名プレドニゾロン)などのステロイド製剤に加え、オンコビン(一般名ビンクリスチン)、ロイナーゼ(一般名L-アスパラギナーゼ)の3剤が基本です。
再発したということなので、今後の化学療法は、さらにこれらにダウノマイシン(一般名ダウノルビシン)やエンドキサン(一般名シクロホスファミド)など1〜2剤加えることになると思います。再度、化学療法を行うことは、重い副作用の危険性もありますが、70パーセント以上は再び寛解に至ることが期待できるでしょう。
しかし、寛解になり、正常の血液細胞が回復しても、体内には白血病細胞が残っています。そのため、治癒させるためには、さらなる治療が必要です。寛解に入った後、化学療法による維持・強化療法を行うか、どこかの時点で骨髄移植を行うかを決断しないといけません。
兄弟など、よいドナーがいれば、移植はいつでもできますし、移植をすると、再発率は化学療法を行ったときよりも下がります。
ただし、移植を行う前には、大量の抗がん剤を投与したり、全身に放射線を照射したりします。放射線を使えば、低身長などの成長障害は避けられません。また、抗がん剤の蓄積による不整脈や心臓の収縮障害なども起こりえます。さらに怖いのは、移植をすることで重い合併症が起こり、亡くなってしまうケースがあることです。
骨髄移植の副作用は化学療法に比べ、ずっと大きく現れます。ですから、主治医の先生と相談をして、化学療法でうまく治療を進められるのなら、そうしたほうがよいと思います。骨髄移植は、化学療法で対応できなくなったときにお考えになるとよいでしょう。
(2008年01月号 がん相談/小児がん 回答者:牧本 敦さん 国立がんセンター中央病院小児科医長)
Q:骨肉腫で切断した脚が痛い。痛みを取り去る方法は?
骨肉腫になった14歳(中学2年生)の娘のことでお尋ねします。抗がん剤治療を受け、その後、左脚を膝下15センチほどのところから切断しました。
それ以降、ないはずの脚が激しく痛み続けています(「幻視痛」と言われました)。モルヒネもあまり効きません。主治医はもうすぐ治まると言いますが、脚を失った上に、激痛に苦しむ娘を前にすると、涙が止まりません。どうにか苦痛を取り去る方法はないでしょうか。
(愛媛県:43歳女性)
A:てんかんの治療薬に効果が期待できる
モルヒネをお使いになっているということは、その前に非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)などを使っても効果が得られないために、徐々にモルヒネを使用するに至ったものと推察します。
モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬は疼痛治療の最終段階で使われる薬剤ですが、神経障害性の疼痛には効きにくい傾向があります。この方の場合には、テグレトール(一般名カルバマゼピン)やランドセン(一般名クロナゼパム)などの鎮痛補助薬を使うとよいと思います。テグレトールもランドセンも、共にてんかんの治療薬で、痙攣を止める効果があります。
テグレトール、ランドセン共に神経を抑制して異常な電気信号を抑える作用があり、それによって、神経痛を緩和する効果が期待できます。
テグレトールやランドセンなどの鎮痛補助薬はいずれか1剤を使用しますが、モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬と併用することは可能です。こうした治療を行うことで、幻視痛がほとんどなくなることも十分に期待できます。
(2008年01月号 がん相談/小児がん 回答者:牧本 敦さん 国立がんセンター中央病院小児科医長)
Q:頭蓋咽頭腫で受ける放射線療法の副作用が心配
7歳の娘(小学1年生)が脳腫瘍の一種である頭蓋咽頭腫と診断されました。良性の腫瘍なので、手術で腫瘍をすべて摘出できれば治る可能性があると言われ、手術を受けましたが、全摘できず、腫瘍が残ってしまいました。
今後は放射線療法を受ける予定ですが、副作用や後遺症がとても心配です。どんな副作用や後遺症が予想されるでしょうか。それらを軽減する方法はあるでしょうか。
また現在、視野障害が起きていますが、これは治るでしょうか。病気が完治して、長生きできるでしょうか。
(東京都:37歳男性)
A:内分泌障害などが起こる。定位放射線療法などで軽減も
頭蓋咽頭腫とは、ホルモンの中枢である脳下垂体の近くに発生する良性の腫瘍です。脳腫瘍は悪性にしろ良性にしろ、閉鎖空間である脳の中にできるため、手術をしたり、放射線を当てたりすると、正常組織に何らかの影響を与えてしまいます。
この方は、手術で腫瘍を取りきれなかったということなので、脳下垂体とその周辺に放射線をかけることになると思います。放射線をかけないでいると、腫瘍が再燃(再増大)してくる可能性が高いと思われます。
放射線療法を行うと、副作用として、ホルモンの分泌障害(内分泌障害ともいいます)が起こる可能性があります。下垂体ホルモンは体の機能を正常に保つ働きを制御していますから、これに障害が起きると、全身のバランスを崩してしまい、日常生活に支障をきたす可能性も出てきます。
ただし、放射線療法は当然、しっかりした照射計画のもとに制限した線量を照射するので、副作用は最小限になるように工夫がされるはずです。
また、定位放射線療法などの新しい方法を行っている医療施設もあります。定位放射線療法では、放射線を病変の形状に正確に一致させて集中照射し、周辺の正常組織を温存して病変だけを治療することを目指します。
ホルモンの分泌障害が起きた場合には、ホルモン補充療法を行います。これによって、問題なく日常生活を送れるようになる可能性が高くなるでしょう。
視野障害は、腫瘍が視神経に触れて、血行障害が起きたり、神経細胞に何らかのダメージが与えられているために起きていると考えられます。
神経細胞は再生しないため、残念ながら、視野障害自体が回復する可能性は低いと思います。しかし視野が狭くても、通常、眼球運動や首の運動でカバーできるように徐々になっていきます。完全に元のようにはいかないまでも、慣れとともに、日常生活にそれほど大きな影響は出なくなる可能性があります。
頭蓋咽頭腫が発症して15年後生存率は、およそ80パーセントです。悪性腫瘍に比べれば、かなりよいといえます。7歳で15年生きても22歳とまだ若いではないかと思われるかもしれませんが、多くの患者さんを何10年も経過観察することが困難なために、データが存在しないだけで、その後の事を保証していない訳ではない、と御理解下さい。
(2008年01月号 がん相談/小児がん 回答者:牧本 敦さん 国立がんセンター中央病院小児科医長)