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★★★副作用を最小限に抑え、最大限の効果を受けるために――
抗がん剤治療の賢い受け方

監修:勝俣範之 国立がんセンター中央病院乳腺・腫瘍内科医長
松本光史 国立がんセンター中央病院乳腺・腫瘍内科チーフ
(2005年08月号)


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勝俣範之さん
勝俣範之さん
松本光史さん
松本光史さん

抗がん剤治療はここ数年で大きな進歩を遂げている。多くの臨床試験を経て、安全で使いやすい、すぐれた薬剤がいくつも登場してきた。しかし、すぐれた抗がん剤がどの医療現場でも正しく使われているかというと、いささか疑問である。

加えて抗がん剤治療には、必ず副作用もついてくる。多くの患者が訴える「つらい」心身の負担を最小限にとどめながら、同時に正しい抗がん剤治療を受けるにはどうすればよいか。婦人科がんの治療法をお届けする。

副作用の症状のほとんどが一過性のもの

副作用は患者さんにとって避けて通れない関門です。抗がん剤の種類によってそれぞれに特徴的なつらい症状が現れるのは事実ですが、その一方で、いたずらに副作用を怖れるあまり、抗がん剤の効果を100パーセント活かしきれていない医療現場が、現実として存在します。

これでは肝心の抗がん剤治療の意味が全くなくなります。そうした観点から、最初に副作用についてお話ししましょう。

まず、抗がん剤による副作用には個人差があり、副作用の頻度(ある副作用が出るか出ないか)や強度(軽いか強いか)、期間(すぐ引くか、少し長引くか)は様々です。同じ抗がん剤で同じスケジュールの患者さんでも、1人は吐きもしないし旅行にも行けた、もう1人はだるいし吐くし、しびれが出てトイレに行くのも大変、というように、人によって大きな違いがあるということなのです。

抗がん剤を使用したことによる副作用は、厳密にいうと200を超えるほど存在します。今回は、通常遭遇する頻度が高いものや稀でも大事なものに限ってお話します。副作用のうち、患者さんが直接経験するものは、主に吐き気と嘔吐、食欲不振、脱毛、便秘や下痢、全身倦怠感、しびれや関節痛、筋肉痛などです。これらの症状を引き起こす原因になる抗がん剤と、具体的に発現しやすい時期を下表で表しました。

こうした副作用は、その症状のほとんどが一過性のもので、出現後、数日で軽減されていくのが普通です。ただし、たとえ一過性のものであっても、多くの患者さんが投与後24時間以内に経験することがあるのが吐き気と嘔吐です。 10年ほど前までは、この吐き気に対して医療の最前線でも「抗がん剤の副作用だから」と我慢を強いることが日常的でしたが、今日ではすぐれた制吐剤を抗がん剤の投与直前と投与後に使うなどして劇的に改善されています。

対処法として現在最もよく使用されているのが、5-HT3受容体拮抗薬のカイトリル (一般名グラニセトロン)とステロイドのデキサメタゾンの併用です。

ブリプラチン(もしくはランダ、一般名シスプラチン)は、一時期、激しい嘔吐を引き起こす代名詞にもなっていましたが、今はこうした正しい対処法をもって患者さんの苦痛を取り除くことに成功しています。

吐き気や嘔吐は、抗がん剤を投与後、最初の48時間が山なので、そこをすぎれば後になって出てくることは少ないです。

スケジュールに関してですが、婦人科がんでよく使われるタキソール (一般名パクリタキセル)とパラプラチン(一般名カルボプラチン)の併用療法は、点滴時間が最短でも4時間45分かかります。本来は通院でも可能なのですが、国立がんセンターでは通院治療センターの席数の関係で、3時間以上かかる点滴は1泊入院で行っています。

それ以外のほとんどの抗がん剤治療は、いまや日帰りでも可能になっていますし、諸症状に合わせた経口薬の処方により、自宅で緩和処置ができることも患者さんの苦痛を心理的にも軽減しています。

抗がん剤による副作用は、さまざまな意味で少なくなっていく傾向があるのです。ただ、副作用の恐いところは、誰もが全く予期しない副作用も中にはあるということです。

[抗がん剤投与後に発現しやすい副作用と時期]
  投与直後 2〜3日 7〜14日 14〜28日 2〜6カ月 5〜6年
副作用 悪心
嘔吐
発熱
血管痛
アレルギー反応
全身倦怠感
食欲不振
悪心
嘔吐
口内炎
下痢
骨髄抑制
食欲不振
胃部重感
脱毛
神経障害
色素沈着
臓器障害
膀胱炎
皮膚の角化・肥厚
感染症
肺線維症
うっ血性心不全
2次発がん

抗がん剤を全般的に扱う専門医がベストの選択

先に、副作用の多くは一過性のものといいましたが、中には致命傷になる重篤な副作用も出てきます。頻度は少ないですが、間質性肺炎や2次性白血病もその1つです。

抗がん剤を全般的に扱う専門の医師であれば、このような事態に対して多くの経験を積み重ねていますから、さまざまな症状に対して1つひとつの症状に合った対処法がきちんと把握できています。

患者さんには直接自覚症状が出ない骨髄抑制もあります。骨髄抑制は白血球の減少、発熱、さまざまな感染症を引き起こす要因になっているのですが、たとえば白血球の減少による感染症対策は、抗生剤やG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤の適切な使用で、リスクをかなりコントロールできるようになっています。

また、白血球の減少が直ちに患者さんを重篤な事態に追い込むわけでもありません。一時的に下がったものが数日後には平常に戻ることが多いからです。患者さん自身の注意点としては、38度以上の発熱があったときで、その際はすぐに主治医に連絡を取ったり、予め処方されていれば抗生剤を飲み始めるなどの適切な対応が必要です。

2005年現在、残念ながら狭い範囲での副作用しか目に入らない医師がいることも事実です。たとえば特定のがんだけを診ている医師は、ときに応用がききにくくなるという現実もあります。そのがんで使われる抗がん剤の種類が限られているために、それ以外の多くの抗がん剤に対しての理解が浅くなるのは否めません。(その医師の)予期せぬ副作用が出たときに、きちんとした対処ができないとしたら、患者さんにとってこれ以上不幸なことはありません。

副作用の顕著な症状である脱毛に対しても同様です。タキソール(一般名パクリタキセル)やタキソテール(一般名ドセタキセル)などは、ほとんど必発で、最初の投与後、1〜2カ月で全脱毛が起きます。現段階でこの症状をなくすことはできません。つらいけれども、現段階では患者さんが負わなくてはならない試練です。

ただ、脱毛は一時的なもので、抗がん剤の副作用が原因での脱毛なら投与スケジュールが終了後、6カ月〜12カ月ほどで、ほぼ以前の髪にもどります。こうした説明が医師あるいはナースのレベルできちんと患者さんに伝え、合せて脱毛が起きる前からヘアウィッグやバンダナ等の用意を勧めておくことで、心理的な負担の一部(女性にとっては重大な負担である)を取り除いてくれるのです。

抗がん剤を扱う医師、薬剤師、そしてナースの対応が、抗がん剤による副作用対策の大部分を担っているというわけです。そして、患者さん自身も、そうした対応のできる施設、医師のもとへ出向き、ある程度の知識をもって納得のいくまで治療への不安や疑問、精神的な部分までを解消していくことが大切です。

間質性肺炎=気管支や肋膜以外で肺の中を構成しているものを間質と言い、そこに起こる肺炎のこと。薬、放射線、ウイルスなどの原因以外に、死亡に至る原因不明の重篤なものがある
2次性白血病=悪性腫瘍の化学療法後や、放射線治療後に発症する急性白血病


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