各種がん
白血病
★★★白血病とは:現状
抗がん剤の副作用に耐える治療から遺伝子レベルで軽やかに治すがんへの転換
監修:大野竜三 愛知県がんセンター総長
取材・文:祢津加奈子 医療ジャーナリスト
(2004年12月号 臓器別、進行別標準治療白血病編)

愛知県がんセンター総長の
大野竜三さん
白血病は、血液のがんです。
白血球、赤血球、血小板などの血球成分は、骨の芯にある骨髄で作られます。
白血病は、これらの血球の元になる「造血幹細胞」が血球成分に成長していく過程のいずれかでがん化し、異常な白血球(白血病細胞)が無制限に増殖していく病気です。
小児から高齢者までどの年代にも発症しますが、大人の白血病は高齢になるほど増えていきます。
かつて「難病」の代名詞であった白血病も、今日では抗がん剤治療や造血幹細胞移植、グリベックなどの治療法の発展により治癒が可能となり、治癒率が飛躍的に向上しています。
より高い治療成績を目指して改良中
白血病は、その経過とがん化した血球細胞の種類によって大きく4種類に分けられます。造血幹細胞は、下図のようにまず「骨髄系細胞」と「リンパ系細胞」に分化します。その後、いくつもの分化過程を経て骨髄系細胞は好酸球、好中球、好塩基球、血小板、赤血球などになります。一方、リンパ系細胞は、Bリンパ球やTリンパ球になります。このうち、赤血球と血小板以外は、すべて白血球と総称されます。
この中で、骨髄系の細胞ががん化したのが「骨髄性白血病」、リンパ系の細胞ががん化したのが「リンパ性白血病」です。
さらに、それぞれ経過によって「急性」と「慢性」に分類されます。急性白血病は、まだ未熟な細胞ががん化してどんどん増殖するため、正常な働きを持つ細胞は作られなくなります。そのため、貧血、出血、感染しやすいといった典型的な症状が起こります。一方、慢性白血病はがん化した白血病細胞が、まだ成熟する能力と細胞としての働きを残しています。増殖のスピードも急性白血病よりゆるやかです。そのため、ゆっくりした経過をたどり、数年間は症状が出ないことが多いのが特徴です。

白血病治療の現状
白血病治療の第一人者である愛知県がんセンター総長の大野竜三さんは、「化学療法や造血幹細胞移植の進歩により、白血病は治癒可能な病気となりました。現在は、より高い治療成績を目指して改良が続けられているところです」と語っています。
白血病治療の基本は、まず「完全寛解」に持ち込むことです。完全寛解とは、体内の白血病細胞が10の10乗個以下に減少し、白血球や赤血球、血小板も正常値になって、症状も消失。骨髄中の白血病細胞(がん化した芽球)も5パーセント以下に減少した状態です。といっても、まだ白血病細胞は根絶されたわけではないので、さらに強力な「地固め療法」や維持療法などを行い、治癒を目指します。
これまで、白血病は強力な化学療法(抗がん剤治療)を行うほど、治癒率が高くなるとみられてきました。たとえば、子供の急性リンパ性白血病では、強力な化学療法を行うと一般には80パーセント以上、再発の危険が高いハイリスク群でも60パーセント以上が治癒するまでになっています。
しかし、「子供や若い人の場合は回復力も旺盛で、強力な化学療法にも耐えうるのですが、中高年になると体力も低下してきます。治療に合併する有害事象、つまり治療関連死があり、必ずしも強力な治療が治癒率の向上にはつながっていないのです」(大野さん)。強力な化学療法ではすでに、頭打ちの状態と考えられるのです。
実際に、この10年間、白血病の化学療法による治療成績はほとんど向上していません。たとえば、急性骨髄性白血病では、治療を強力にしても完全寛解に入る率は80パーセントを大きく超えることはなく、長期生存例も40パーセント以下にとどまっています。
こうした状態に風穴を開けたのが、グリベック(一般名イマチニブ)などの分子標的治療薬です。これらは、白血病の原因である遺伝子異常に分子レベルでターゲットをしぼり、白血病細胞を消滅させる薬です。その効果は「当初想像していた以上に、すばらしいものです」と大野さん。これによって、白血病治療はつらい副作用を乗り越えて治す治療から、遺伝子レベルで治すがんへと、新たな方向性が生まれてきたのです。
(JALSG試験、年齢(15歳〜64歳)と病型(除APL)を補正)

*4年生存率
(JALSG試験、<65歳、除APL)
