各種がん
大腸がん
大腸がんの治療 Q&A
Q:S状結腸がん。術後の化学療法に不安
74歳の父のことで相談です。最近、地方の病院でS状結腸がんとの診断を受けました。リンパ節も切除する予定です。手術後は、化学療法も行う予定とのことです。化学療法は副作用もあり、不安です。手術後の化学療法は必ず受けなければいけないのでしょうか。年齢のこともあり、身体に負担のかかる化学療法は避けたいと考えています。アドバイスをお願いします。
(鹿児島県:46歳女性)
A:再発予防には手術後に補助化学療法を
手術後に化学療法の必要があると判断された訳ですから、手術前のCT検査などでリンパ腺への転移が疑われ、結腸がんの進行度は3期である推定されます。結腸がんの3期の場合、手術しても約17パーセント程度の患者さんに再発が起こりますので、再発を予防する目的で手術後に補助化学療法を行います。
この術後補助化学療法では、5-FUとロイコボリン(一般名ホリナート)を6カ月間注射する方法が一般的です。飲み薬で代用される場合もあります。この術後補助化学療法をした場合は、しない場合に比べて、生存率が10〜20パーセント改善するといわれており、再発予防効果は明らかです。術後補助化学療法には再発予防というメリットがある一方で、副作用というデメリットもあります。副作用には急性期のものと慢性期のものがあり、患者さんの身体の状態によっても副作用の現れ方は異なります。一般的には、この術後補助化学療法の副作用はそれほど強くはありません。ですから、一度、お受けになってみて、副作用が強くてつらかったりしたら、そのときにやめるというというのも選択肢の1つかと思います。
再発予防効果が認められている治療ですから、副作用が怖いというだけでみすみす生存率がアップするチャンスを逃してしまわないようにしてください。
患者さんの身体の状態は年齢だけでは判断できませんし、74歳という年齢なら受けてみる価値は十分あると思います。もちろん、本人がつらい、化学療法は受けたくない、とのことであれば、受けないという選択肢を選ぶこともできます。
(2008年01月号 がん相談/大腸がん 回答者:吉田和彦さん 東京慈恵会医科大学付属青戸病院副院長)
Q:初期の直腸がん。一番安全な手術方法を選びたい
トイレで便に鮮血が付いているのに気がつきました。病院で検査をした結果、直腸に丸い形をした腫瘍が見つかりました。初期の直腸がんで、肛門を温存して、摘出手術が可能とのことです。ただ、手術には、縫合不全などさまざまな合併症が起こるとの説明を受けました。私は、高血圧の持病があり、10数年前から降圧剤の服用を続けています。一番安全な手術方法を教えてください。
(岐阜県:68歳女性)
A:開腹手術が一般的。高血圧はあまり気にせずに
基本的には100パーセント安全な手術はありません。大腸がんの手術に限らず、あらゆる手術で、術後にいろいろな不都合が起こることもあります。手術を受けるときには、このことを十分に理解していただく必要があります。
非常に肛門に近く、早期の直腸がんであれば、肛門から挿入した内視鏡で治療可能です。それが無理な場合には、(低位)前方切除術、あるいは人工肛門を併設する直腸切断術のいずれかが選択されます。
(低位)前方切除術の場合、基本的には開腹し、大腸の切除、リンパ節郭清、残った腸管をつなぎ合わせて吻合という順序で行います。多くの施設では、残った腸管をつなぎ合わせる際には、通常は自動縫合器という器械が用いられます。なお、初期の直腸がんでは、開腹せずに腹腔鏡を用いて手術を行う施設もありますが、肛門に近い直腸がんでは合併症の発生率が高く、現時点では開腹して行うのが一般的です。
直腸がんの手術の合併症として、腸管のつなぎ目(吻合部)から便が漏れる縫合不全が約5パーセントの割合で起こります。医療技術は進歩していますが、残念ながら、縫合不全をゼロにすることはできません。縫合不全を生じた場合には、腹膜炎を経てお腹に膿が貯まり、熱が出ます。こうした場合には、一時的に吻合部よりも口側に人工肛門を作って、便が縫合不全の場所に流れないようにします。3〜4カ月後に人工肛門を閉鎖することは可能になります。縫合不全が命にかかわることは稀です。
このほか、手術後の一般的な合併症として、心臓に関わる心不全や心筋梗塞など、肺に関わる無気肺、肺炎、塞栓症などがあります。なお、高血圧の持病についてですが、高血圧のない人よりはリスクがあるかも知れませんが、大きなリスクにはなりません。あまり気になさらないでください。
(2008年01月号 がん相談/大腸がん 回答者:吉田和彦さん 東京慈恵会医科大学付属青戸病院副院長)
Q:検査だけでリンパ節転移がわかる? 切除が必要?
総合病院で大腸内視鏡検査とCTスキャンを行った結果、結腸がんでリンパ節転移もあるといわれました。手術で腫瘍とリンパ節を切除すると説明を受けました、検査だけでリンパ節転移があるとわかるのでしょうか。また、リンパ節を取った場合、どんな障害が現れますか。リンパ節は、絶対に取り除かなければいけないのでしょうか。
(鳥取県:61歳男性)
A:病理検査が必要。切除してもほとんど障害はない
検査だけでリンパ節転移があるかどうかは完全にはわかりません。一般的には、CTやMRI、超音波検査で、リンパ節が腫れていて、その大きさが1センチ以上ならリンパ節転移の可能性があります。しかし、腫れた場所の周囲に炎症があると、それに反応してリンパ節が1センチ以上の大きさになることもあります。
また、CT検査などで、リンパ節の腫れが1センチ以下だから、がんの転移ではないとも言い切れません。つまり、リンパ節を切除して、病理検査をしないかぎり、リンパ節転移なのかどうかわからないのです。
ただし、検査の精度はかなり向上しています。複数のリンパ節が大腸がんと関係している領域に存在している場合には、大腸がんのリンパ節転移の可能性が高まります。
2つ目のご質問ですが、リンパ節を切除してもほとんど障害はありません。切除しないと今後、リンパ節の腫れが大きくなって、リンパ節転移の再発や再燃で、さまざまな副作用を起こします。たとえば、腸を詰まらせて腸閉塞や、尿管を巻き込んで尿路閉塞などの原因となります。
ですから、やはり切除したほうがよいと思います。切除すれば、根治できる可能性があるからです。転移が疑われるリンパ節を残しておく必要性や、メリットは1つもありません。付け加えると、リンパ節転移があれば、病期はステージ3です。手術後は化学療法の適応となります。
リンパ節転移があれば、遠隔臓器へ転移している可能性が非常に高いといえます。このことからも、リンパ節を切除し、転移の有無を確認して、術後に適切な治療を受けたほうがよいかと思います。
なお、リンパ節切除は、手術的にはそれほど難しくありません。安全に行うことができます。リンパ節切除そのものについては、あまり深刻に考える必要はないと思います。
(2007年09月号 がん相談/大腸がん 回答者:吉田和彦さん 東京慈恵会医科大学付属青戸病院副院長)
Q:人工肛門の管理が煩雑に感じることがある
2年前に直腸がんの手術で直腸とS状結腸、肛門、リンパ節を切除して、人工肛門(ストーマ)を装着しました。人工肛門からお湯を入れて大腸を洗う方法で管理をしています。手術と人工肛門のおかげで、生かされていると感謝しています。ただ、人工肛門の管理が煩わしいと思うことがあります。ほかに何かよい方法はないでしょうか。
(福井県:59歳男性)
A:管理方法をパウチ法に変えてみては
直腸がんの手術で、直腸とS状結腸、肛門、リンパ節を切除されたとのことですからマイルスの手術と呼ばれる腹会陰式直腸切除術を受けられたのだと思います。この手術は、肛門括約筋を含めて、肛門を切除します。肛門まで切り取ってしまった患者さんの自然肛門を復元させることは困難です。現代の医学はかなり進歩していますが、残念ながら、自然肛門を人工的につくるところまでは達していません。ですから、ご相談者の場合には、一生、人工肛門で排便をコントロールしていく必要があります。
人工肛門を管理する方法には、人工肛門からお湯を入れて大腸を洗う洗腸法と、人工肛門に袋を貼って便を集めるパウチ法とがあります。前者の洗腸法では1〜2日に1度、腸のなかを1時間ほどかけて洗います。その後は、まったく便は出ません。
後者のパウチ法は、自然にまかせて排便する方法です。最近は、用いる装具が非常に進歩して、便や臭いが漏れることはありません。袋に便がたまったら、袋を取り替えるだけですから簡単です。
ご相談者は、洗腸法をなさっているわけですが、煩雑に感じたりしたときには、パウチ法に変えることもできます。洗腸による煩わしさがなくなると思います。洗腸法にこだわる必要はありません。
手術で肛門を残すことができた場合でも、便を漏らす便失禁を起こすことがあります。日常生活上のことを考えると、むしろ、人工肛門で便通をコントロールしたほうが生活の質(QOL)が向上する場合も少なくありません。人工肛門にしたことを後悔しないようにしてください。
(2007年09月号 がん相談/大腸がん 回答者:吉田和彦さん 東京慈恵会医科大学付属青戸病院副院長)
Q:検査内容は妥当か。腹腔鏡と開腹、どちらの手術がよい?
81歳の義父についてご相談します。大腸の内視鏡検査を受けたところ、右側の結腸にがんが見つかりました。表面は隆起しており、外から触っても腫瘍の感触が伝わってくると義父は言います。
医師から、腸管の8割ががんでふさがっている状態で、足にむくみがあり、リンパ節転移の可能性もあると言われました。
「大腸X線検査」「上部消化管(胃)内視鏡検査」「単純CT検査(腹部以外)」「造影CT検査」の結果が出た後、手術日程が決まります。おそらく開腹手術になるのではないかと思います。
義父自身は納得していますが、年齢や体力面を考えると、手術前の検査をもっと少なくして、腹腔鏡下で手術してほしいと考えている者も、身内にはおります。
義父の現状は、胃を5分の4切除しており、肺気腫のため、片肺がほとんど機能していない状態です。脳出血が原因の後遺症が、左半身にあるほか左側の顔面にベル麻痺があります。両眼とも緑内障で、現在眼科にも通っています。
このような状態で、以下について、おうかがいします。
(1)右記の術前検査は妥当でしょうか。(2)腹腔鏡下手術と開腹手術では、どちらが望ましいでしょうか。腹腔鏡下手術のほうが侵襲は少ないのでしょうか。(3)術前検査を断っても、手術をしてくれる医療施設や医師は存在するでしょうか。
(茨城県:52歳女性)
A:検査は妥当。腹腔鏡下手術にこだわる必要はない
1つずつお答えします。まず(1)についてです。結論から言いますと、いずれも妥当な検査だと思います。
大腸の内視鏡検査はお受けになっていると思いますから、「大腸X線検査」は必ずしも必要なわけではありませんが、病巣の位置と範囲、さらには副病変があるかどうかを確認するには意味のある検査です。
胃を5分の4切除されていますが、大腸がんは胃がんを併発することもありますから、「上部消化管(胃)内視鏡検査」を行うことも妥当だと思います。
「単純CT検査(腹部以外)」とお書きですが、これは胸部CT検査のことだと思います。大腸がんは肺に転移しやすいため、この検査も必要だと考えます。
大腸がんの広がり具合を確認するには、腹部の「造影CT検査」が有効です。この検査によって、肝臓にコントラストができて、肝臓に転移があるかどうかわかりやすくなると同時に、リンパ節転移の有無などの診断率が高まります。
以上のとおり、いずれの検査も妥当と考えて差し支えありません。さらにいえば、肺機能や心臓の検査、腫瘍マーカーの検査なども必要になるかもしれません。
(2)についてです。腹腔鏡下手術は、一般的には侵襲度は低いのですが、手術時間が長くなる傾向があります。 お義父様の場合、肺気腫や脳出血、81歳という年齢を考えると、開腹手術により短時間で終了したほうが、むしろリスクは少ない可能性があります。
施設によっては、腹腔鏡下手術は早期の大腸がんに限っているところもあります。
以上の点を考えると、腹腔鏡下手術にこだわる必要はないと言ってよいでしょう。
(3)についてです。まず前提として、(1)に対しお答えしたように、主治医が提示されている検査はいずれも妥当性があります。
セカンドオピニオンを受けるのは構わないのですが、手術前の検査のデータもないのに、「手術をしてください」と言われても、言われた施設や医師は困ってしまいます。
病変の広がり具合やリスクの度合いなど、最低限のデータがないと、手術はできません。ですから、まずは検査をお受けになって、その上で希望があれば別の専門家からセカンドオピニオンを聞くのがよいと思います。
治療がうまく進めば治癒する可能性もありますので、的確な診断を得るためにも、必要な検査は受けるべき、と考えます。
(2007年07月号 がん相談/大腸がん 回答者:吉田和彦さん 東京慈恵会医科大学付属青戸病院副院長)
Q:内視鏡手術の効果は確立されているか
大腸内視鏡検査で、S状結腸に小さなポリープが見つかりました。検査の結果、粘膜下層がんで、平らなタイプと診断されました。腫瘍の大きさは1.5センチほどです。
内視鏡で切除する内視鏡手術(内視鏡的粘膜切除術=EMR)ができるとのことです。開腹手術よりも身体への負担が少ない利点などがあるとのことです。この手術方法はすでに確立されているのでしょうか。また、その治療効果は明らかにされているのでしょうか。納得したうえで、治療を受けたいと思います。アドバイスをお願いします。
(神奈川県:58歳男性)
A:普及している治療。受けたほうがよい
EMRが可能ということですから、もちろん受けたほうがよいでしょう。ご相談者のように、腫瘍が平らなタイプには、病変の下層部に生理食塩水を注入して腫瘍を持ち上げてから、腫瘍に金属製の輪をかけて、電流を流して焼き切るEMRという治療を行うことが多くなりました。かなり普及している治療です。
ご指摘のように、この治療は、開腹手術よりも身体への負担は少ないと思います。ただし、治療の合併症として出血が0.3パーセント、穿孔が0.2パーセントの確率で起こると報告されています。治療を受けるときには、これらのリスクも考慮してください。
ご相談者の場合、大きさが1.5センチとのことですから、ポリープの茎が広いと内視鏡的粘膜剥離術(ESD)と呼ばれる治療が必要になる可能性もあります。広い病変を電気メスで徐々に剥ぎとる治療です。胃がんの手術で行われるようになった手術法を大腸がんに応用した治療です。
ただし、大腸の壁は薄いため、ESDはEMRよりも治療法がかなり難しく、治療中に穴を開けるリスクが高まります。治療経験のある病院で治療を受けたほうがよいと思います。
また、EMRやESDで切除した標本の病理(顕微鏡)検査で、がんが粘膜下層深く(1000マイクロメートル以上)への浸潤が認められた場合、腸管外のリンパ節へ転移している可能性が11パーセント程度あります。そのままにしておくと、リンパ節に再発する可能性が生じますので、腹腔鏡あるいは開腹による周囲リンパ節を含む大腸の切除が必要となります。
(2007年03月号 がん相談/大腸がん 回答者:吉田和彦さん 東京慈恵会医科大学青戸病院副院長)
Q:手術後は、どのような検査が必要か
66歳の父のことでご相談します。5カ月前に、直腸がんで手術をしました。幸い、肛門を残す手術を受けられて、人工肛門は避けることができました。手術後の経過も順調なようです。
質問は、再発に対する取り組みについてです。手術後の検査には数多くあるようですが、具体的にはどんな検査が必要なのでしょうか。どのような間隔で受けたらよいのでしょうか。ご意見をお聞かせください。
(愛媛県:38歳女性)
A:CT、腫瘍マーカー、大腸内視鏡で定期検査を
ステージ0やステージ1の粘膜下層までのがんには、経過観察はほとんど必要ありません。ステージ1の筋層へ浸潤したがんや、最も多いステージ2〜3の場合では、経過観察が必要です。ステージ4の場合には、余命が限られ、症状に対する緩和も必要となりますので、継続的なサポートが必要となります。残念ながら、現状では、大腸がん切除後の経過観察については、科学的根拠のあるデータはそれほど数多いわけではありません。
直腸がんの再発には、局所再発と全身再発とがあります。局所再発にはCTとMRI、吻合部の再発に対しては大腸内視鏡検査を用います。全身再発の多くは肝臓や肺に起こります。肝転移や肺転移は、主にCTでチェックします。局所再発と全身再発の両方のチェックには、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)の測定が効果的です。
それぞれの検査をどれぐらいの頻度で行うかについては、さまざまな意見があって、決まってはいません。日本の大腸がんガイドラインでは、再発の80パーセント以上は手術後3年以内に起こるので、手術後3年間は3〜4カ月に1度、問診・診察とCT、腫瘍マーカーをチェックします。それらに加えて、大腸内視鏡検査を年1回行います。
また、再発の95パーセントは、5年以内に生じるので、手術後4〜5年間は、6カ月に1度のペースで経過観察を行います。直腸がんを含む大腸がんでは、局所再発でも、肝転移や肺転移を起こした場合でも、切除さえできれば、もう1度、根治に持ち込める可能性があります。この点がほかのがんとは異なります。そのため、経過観察をして、再発の早期発見と早期治療を行うことが大切だと思います。また、大腸がんになった方は、ほかのがんにもかかりやすくなっています。大腸がんの再発を目的にした経過観察を受けるだけでなく、通常のがん検診で、ほかの頻度の高いがんのチェックを行うことも大切です。
(2007年03月号 がん相談/大腸がん 回答者:吉田和彦さん 東京慈恵会医科大学青戸病院副院長)
Q:抗血栓薬を飲んでいる。手術のとき出血が心配
精密検査で、直腸がんと診断されました。直径約3センチの腫瘍が存在し、粘膜より深く浸潤しているようです。肺や肝臓への転移は認められず、手術で切除すれば治る可能性が大きいそうです。
私は2年前に脳梗塞を起こし、血液を固まりにくくさせるワーファリンという抗血栓薬を飲んでいます。そのため、大腸がんの手術の際、出血を抑えにくいかもしれないという話を聞きました。この薬によって出血が止められず、失血死する可能性もあるのでしょうか。
(神奈川県:58歳男性)
A:手術の約1週間前から他の薬に切り換えれば、心配ない
ワーファリンはビタミンKの働きを阻害することで血液凝固因子の生成を抑え、血液を固まりにくくさせる薬です。最近は脳梗塞や心筋梗塞を起こしたことのある患者さんや、脳梗塞を起こしやすいと考えられる心房細動や静脈血栓症の患者さんなどへ、積極的に投与されます。いずれも血の塊ができやすいことが原因なので、ワーファリンの服用によって血液を固まりにくくさせ、脳動脈や肺動脈、心臓の冠動脈など重要な血管が詰まるのを予防することができます。
血液を固まらせる血液凝固因子はプロトロンビンなどいくつかの種類がありますが、いずれも肝臓で生成され、その際にビタミンKが深く関与しています。
重要なのは、ワーファリンを服用してからその血液抗凝固作用が現れるまでに2〜3日を要し、同じ理由で服用を中止してからも2〜3日その効果が持続することです。そのため直腸がんなどの手術を行う場合、通常、手術の約1週間前からワーファリンの服用を中止し、ヘパリンという別の薬を投与することに切り換えます。
ヘパリンはワーファリンと同じ抗血栓薬ですが、非常に短時間のうちに抗凝固作用が現れたり消失したりする薬です。手術の直前にヘパリンの投与をやめれば血液が固まりにくくなることもなくなり、安心して手術を受けることができます。現在、直腸がんの手術の前の、ワーファリンからヘパリンへの切り換えは一般的に行われており、手術で失血死するという可能性はほとんどありません。ただし、血液を固まりにくくさせるワーファリンやヘパリンの投与を一時的に中止するのですから、低いながらも、患者さんによっては脳梗塞などを再発する可能性はあります。
(2007年05月号 がん相談/大腸がん 回答者:佐藤温さん 昭和大学付属豊洲病院内科助教授)